先生がくれた「明日」
映画を観る間も、落ち着かなかった。

一体、私は何をしているんだろう。


家に、歩と先生を二人残して、自分は映画を観ているなんて。


やっぱり、この仕事おかしいよ。

性に合わないよ。


映画は甘々のラブストーリー。

こんなのあるわけない、って言いたくなるような。

私は毎日、現実ばかり見て暮らしているから、こんなの幻想だと思ってしまう。

歪んでるのは私なんだって、分かってるけど。


盛り上がりもクライマックスを迎えた頃、彼の手が私の手をぎゅっと握った。

その手を振り払って、ここから帰りたい衝動に駆られる。

だけど、そんなことしたら―――


また仕事、失っちゃう。


そこまでしてこの仕事にしがみつく意味なんて、なかったのに。

私はただ、焦りに囚われたように、危険な任務を遂行していた。

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