先生がくれた「明日」
彼の家は、アパートの2階の一室だった。
「ごめん、全然用意してなくて。汚いけど。」
そう言う割に、部屋は整然としている。
むしろ、もう少し散らかっていた方が落ち着くのに。
「で、ホットミルク、作る?」
「うん!」
彼の隣に行って、じっと見る。
「お前、レシピ盗もうってわけじゃないだろうな。」
一瞬ドキッとする。
だけど、その気持ちを悟られないように、笑顔をつくる。
「見てても再現なんてできるはずないよ。私、料理苦手だし。」
「そう?きっと単純すぎて、え?って思うよ。」
彼は、牛乳を鍋に入れて、火にかけた。
私は、その様子をじっと見つめる。
「弱火であっためるんだ。沸騰させちゃだめだぞ。って、何で俺教えてんだよ。」
苦笑する彼。
いいの。
もっと教えて。
最後まで、教えて。
温まると現れる膜を取り除きながら、沸騰させないように弱火で、長い時間をかけてコトコトと温める。
次第に、牛乳は温まっていい香りがしてくる。
しばらくして彼は、バニラエッセンスを数滴加えた。
そして、小さじ一杯くらいの砂糖。
最後に、ハチミツを少量加える。
そこで火を消して、余熱で温めながらぐるぐると鍋をかき混ぜた。
「でーきた。」
「いい匂い……。」
「どうぞ。」
大きめのカップに注がれたその液体は、夢みたいに温かくて、いい香りがした。
一口飲むと、ああ、まさしくあの喫茶店の味。
「おいしー。」
「よかった。」
彼はにこっと笑う。
私は、夢中でホットミルクを飲んだ。
とっても美味しくて、それにレシピを知れた達成感もあって。
私は油断していたんだ―――
「ごめん、全然用意してなくて。汚いけど。」
そう言う割に、部屋は整然としている。
むしろ、もう少し散らかっていた方が落ち着くのに。
「で、ホットミルク、作る?」
「うん!」
彼の隣に行って、じっと見る。
「お前、レシピ盗もうってわけじゃないだろうな。」
一瞬ドキッとする。
だけど、その気持ちを悟られないように、笑顔をつくる。
「見てても再現なんてできるはずないよ。私、料理苦手だし。」
「そう?きっと単純すぎて、え?って思うよ。」
彼は、牛乳を鍋に入れて、火にかけた。
私は、その様子をじっと見つめる。
「弱火であっためるんだ。沸騰させちゃだめだぞ。って、何で俺教えてんだよ。」
苦笑する彼。
いいの。
もっと教えて。
最後まで、教えて。
温まると現れる膜を取り除きながら、沸騰させないように弱火で、長い時間をかけてコトコトと温める。
次第に、牛乳は温まっていい香りがしてくる。
しばらくして彼は、バニラエッセンスを数滴加えた。
そして、小さじ一杯くらいの砂糖。
最後に、ハチミツを少量加える。
そこで火を消して、余熱で温めながらぐるぐると鍋をかき混ぜた。
「でーきた。」
「いい匂い……。」
「どうぞ。」
大きめのカップに注がれたその液体は、夢みたいに温かくて、いい香りがした。
一口飲むと、ああ、まさしくあの喫茶店の味。
「おいしー。」
「よかった。」
彼はにこっと笑う。
私は、夢中でホットミルクを飲んだ。
とっても美味しくて、それにレシピを知れた達成感もあって。
私は油断していたんだ―――