先生がくれた「明日」
私の通っている高校は公立で、校則が厳しい進学校。

スカート丈は膝にかかる程度。

長髪は結ぶこと。

化粧・染髪・脱色はもちろん禁止。

そして、『バイト禁止』。



跡部光春という先生は、うちの学校でも名物の恐ろしい先生。

まだ30代なのに、生徒指導主任。

このままいけば、次は管理職だって言われてるらしい。

他人に厳しい分、きっと自分にもストイックなんだろう。

中年太りとかしそうもないし。


だけど、他の先生の噂によると「結婚は程遠い」らしい。

何でも、言い寄られても付き合いさえしないらしいから。


噂では、美人で有名な音楽の桐谷先生が、一時期跡部先生に熱を上げていたとか。

それで、クリスマスに跡部先生を誘ったらしいんだ。

そしたら―――

「桐谷先生には、俺よりもっとふさわしい人が大勢いますよ。」

なーんて言われて、フラれたんだとか。

しかもその時、

「俺は、誰のことも好きにならない。」

って言ってたらしい……。

どうしてこんなに詳しいかというと―――


私の友達が、桐谷先生の妹だからだ。

だから、そういう情報が耳に入ってくるわけで。



そう、美女に好かれるだけあって、跡部先生は顔だけ見ていればなかなかのイケメンなんだけれど。

性格が……問題なんだ。




「新庄。」


「はい。」


「校則違反をしていることを分かっているのか!」


「……。」


「ふざけるのもいい加減にしろ!」




怒った顔も、絵になる人だと思う。

しゅっとしたスーツに、細い指先。

切れ長の二重瞼に、薄い唇。

私、跡部先生の顔こんなにじっくり見たの初めてかも……。


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