先生がくれた「明日」
歩が出かけてしまって。

バイトに行くこともなくて。


私は、ここ最近では珍しいくらいのんびりした休日を過ごした。

いつもできないところの掃除をしたり。

夕飯の支度をしたり。

そんなことをしても、ぽっかりと空白の時間が出来てしまう。


そんな時間には、ソファーに深く身を沈めて、いろんなことを考えた。


―――公務員試験。


そう言えば、さっき先生はそんなことを言っていたね。

難しいのかな。

難しいんだろうな。


ちょっと不安になる。

だけど、跡部先生が教えてくれる、って言ってた。

きっと、だから大丈夫だ。

跡部先生がいれば、大丈夫だ―――


跡部先生のこと、考えた。


今まで、怖くて近寄りがたかった先生。

最初のバイトを、私から取り上げた先生。


だけど、最近の先生は。

歩も含めて、私たちのことを全力で支えてくれる。

先生は、暇さえあれば家に来て、歩の相手をしてくれたり。

昨日みたいに、私のことだって―――


どうして、そこまでしてくれるんだろう。

先生だから?

ご近所さんだから?

それとも、先生は本当に優しくて、私たちを放っておけないんだろうか。


うん、きっとそうだね。


ごめんね、先生。

迷惑かけて、ごめん。

でも、私、自分の足で歩けるように、もっと強くなるから。

だからそれまで、もう少し、そばにいてほしい。



「ただいまー!!!」



歩の元気な声が、玄関の扉越しに聞こえる。

私はぱっと笑顔になって、玄関に走った。


私のたった一人の家族。

私の可愛い歩のためなら、何だってできるよ。


歩の存在は、いつでも私の原動力だから。
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