先生がくれた「明日」
教室に入る寸前で、先生に腕を掴まれた。



「新庄。」


「離して。」


「新庄、どうしたんだ。」


「何でもない。」


「おまえらしくない。」



私らしくない?

私は、そんなに完璧な人間じゃないよ。

時には、人には理解してもらえないような理由で、人を妬んだり羨んだりする。


だからそういうときは、理由なんて訊かないで放っておいてほしいのに―――



「まあいい。今日の放課後も進路資料室においで。」


「今日は帰る。」


「ダメだ。絶対に来い。」


「……。」



今日は、一体どういう顔をして先生のところにいけばいいと言うのだろう。

私は途方に暮れる。


先生がそっと、捕まえていた手を離す。

私は結局先生の顔を見ないまま、自分の席を目指して早足で歩いた。
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