先生がくれた「明日」

3つ目のバイト

そして迎えた週末。



「おい、支度はできたか?」


「うん、今出る!歩、行ってくるね!」


「行ってらっしゃい!」



ドアを開けると、その向こうには跡部先生が立っている。



「ほら、早く行くぞ!」


「わ、ちょっと、先生待ってよ!」


「なんだ。」


「私、どこかおかしいとこない?大丈夫かな……。」


「お前はいつもおかしいだろ。」


「へ?何が?」


「いろいろ。……俺を怖がらないとことか。」


「何で跡部先生を怖がるの?先生、別に怖くないもん。」



そう言ったら、先生は急に無言になった。

きゅっとひそめた眉が、切なげに歪む。



「どうしたの、先生。」


「いや、何でもない。」



分かってる。

訊いたって、教えてはもらえないって。

だけど、私の言葉でそんな顔になる理由が、知りたいよ。



「せんせ、」


「別に、俺の実家の和菓子屋なんだから、そんなに緊張する必要はない。」


「……うん。」



何事もなかったような顔で、先生は微笑んだ。

それ以上追及することなんてできるはずもなくて、私は口を噤んだんだ。
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