先生がくれた「明日」
それからというもの、私は先生に守られるように先生の実家でバイトをして。

その収入で、何とか生活を支えていた。

相変わらず貧乏だけど、もう二度と、法に触れるようなことはしなくて済むように。

そうしてくれたんだ、先生が。



「莉子ちゃん、これ、持って帰って!」


「え、でも!」


「いいの。今日の売れ残りだから。押しつけるようで申し訳ないけど、貰ってくれる?」


「いいの?」


「ええ!」



お姉さんは、にっこりと笑う。

私は、有り難くそれを両手で受け取る。

いつもいつも、こんなふうに売れ残りの商品をくれるんだ。

それが、どれほど嬉しいか。


いつも、毎日の食事だけで精一杯で、間食なんてしなかった。

だから、甘いもの、というだけで私の胸は高鳴る。

それは歩も同じで。



「ただいまー!」


「莉子姉おかえり!ねえ、今日はバイトだったんでしょ?」


「そうだよ!ほら!」


「わあーっ!」



目をキラキラさせる歩に、お姉さんから貰った包みを渡す。



「今日は、おまんじゅうだね!カステラもある!」


「待って歩。ごはん食べてからだよ!」


「うん!」



歩はいつも、我が儘なんてひとつも言わない。

小さいのに、色々分かっているんだ。

そんな歩に、少しでも楽をさせてあげたくて。


私はその頃毎日、深夜まで勉強に励んでいた。
< 47 / 104 >

この作品をシェア

pagetop