先生がくれた「明日」
あの日のこと、私は一生忘れないよ―――
気怠い空気の先生の部屋。
カーテンが閉まっている、その薄暗い部屋で。
先生と私は―――
静かにベッドに横たわっていた。
先生は、泣いていたね。
私も、泣いていた。
「なあ、莉子。」
「……ん?」
掠れた声の先生が、私の髪を、優しく優しく撫でて。
「ごめん、なあ……。」
涙を含んだ声が、あまりにも切なくて。
その弱々しさに、涙がこぼれて止まらなかった。
「俺、ずっと後悔する。お前を抱いたこと、」
「言わないで、先生。」
苦しいよ、先生。
ごめんねはこっちだよ。
自分の寂しさを埋めるために、わざと先生を誘った。
それは先生にとって、つらいことだと分かっていたくせに。
「でもお前……、」
何かを言いかけて口を噤んだ先生。
私は、首を傾げながら、先生の髪に触れる。
しなやかな髪が、冷たかった。
「俺のこと、覚えててくれるか?」
「え?」
「忘れないでいてくれるか……?」
先生の質問の意味は分からなかったけれど。
私は、しっかりと頷いた。
「覚えてるよ、先生のこと。これから先も、ずっと、ずっと……覚えてるよ。」
先生の手を手繰り寄せて、ぎゅっと握った。
先生も、握り返す。
「ありがとなあ、莉子……。ごめんなあ……。」
先生の目から次がら次へと溢れる涙を、私はぼんやりと見つめていた。
先生の抱えているものが、怖かった。
今は、何も聞きたくない。
何も聞かなくていい。
ただ、先生が隣にいてくれれば、それで。
歩がいなくなった寂しさも、未来のことも、すべて忘れていられる―――
「先生、大丈夫だよ。」
いつの間にか、慰められていた私の方が、先生を慰めていた。
あの夜に、先生がしてくれたみたいに。
先生の背中を軽くたたきながら、大丈夫、って繰り返して―――
気怠い空気の先生の部屋。
カーテンが閉まっている、その薄暗い部屋で。
先生と私は―――
静かにベッドに横たわっていた。
先生は、泣いていたね。
私も、泣いていた。
「なあ、莉子。」
「……ん?」
掠れた声の先生が、私の髪を、優しく優しく撫でて。
「ごめん、なあ……。」
涙を含んだ声が、あまりにも切なくて。
その弱々しさに、涙がこぼれて止まらなかった。
「俺、ずっと後悔する。お前を抱いたこと、」
「言わないで、先生。」
苦しいよ、先生。
ごめんねはこっちだよ。
自分の寂しさを埋めるために、わざと先生を誘った。
それは先生にとって、つらいことだと分かっていたくせに。
「でもお前……、」
何かを言いかけて口を噤んだ先生。
私は、首を傾げながら、先生の髪に触れる。
しなやかな髪が、冷たかった。
「俺のこと、覚えててくれるか?」
「え?」
「忘れないでいてくれるか……?」
先生の質問の意味は分からなかったけれど。
私は、しっかりと頷いた。
「覚えてるよ、先生のこと。これから先も、ずっと、ずっと……覚えてるよ。」
先生の手を手繰り寄せて、ぎゅっと握った。
先生も、握り返す。
「ありがとなあ、莉子……。ごめんなあ……。」
先生の目から次がら次へと溢れる涙を、私はぼんやりと見つめていた。
先生の抱えているものが、怖かった。
今は、何も聞きたくない。
何も聞かなくていい。
ただ、先生が隣にいてくれれば、それで。
歩がいなくなった寂しさも、未来のことも、すべて忘れていられる―――
「先生、大丈夫だよ。」
いつの間にか、慰められていた私の方が、先生を慰めていた。
あの夜に、先生がしてくれたみたいに。
先生の背中を軽くたたきながら、大丈夫、って繰り返して―――