先生がくれた「明日」
二次試験は面接と集団討議。

不安もあったけれど、なんとか乗り越えた。



「二次通過したよ、先生。」


「よかった!もうあと少しだな。お前ならきっと、大丈夫だ。」


「うん。大丈夫だよ。」



先生は、最近あまり私の家に来なくなった。

面接や論説文の練習に、学校では遅くまで付き合ってくれるけれど。

なんだか、少しずつ私と歩から、距離を置いているように見えた。



「先生、お祝いにちょっと寄ってってよ。」


「お祝い?まだ早いだろ。」


「先生。」



どうして?

どうして離れていくの?

私の内定が決まってしまったら、本当に先生は私の前から姿を消してしまうの―――



「わかったよ。行ってやるから、そんな顔すんなって。」



先生は、切ない顔で笑って。

足を私のマンションの方に向けた。



「うっ、」


「先生?」



急にうずくまってしまった先生に、私は呆然として。



「先生!跡部先生!」



ただ、呼びかけることしかできなくて。



「……大丈夫だ。心配するな。」



そう言って、無理してるみたいに笑う先生の顔を、真っ直ぐに見られなかった。


先生、先生の隠していること―――

知りたくないよ。

私、知らなくていい。

聞いても、きっと信じないから。



「ほら、行くぞ。」



何事もなかったかのように歩き出す先生を、私の心が信じたいと言っていて。

私は、何も訊かずに先生の背中を追ったんだ。
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