先生がくれた「明日」
花火って、始まるまでのドキドキが好き。

終わってしまった後には、どうしても寂しい気持ちになってしまうから。


特に今は。

フィナーレの仕掛け花火のとき、本当に泣いてしまいそうになった。

これで終わってしまうから。

先生と見た花火は、終わってしまうから。



「さてと、じゃあ海岸で手持ちやろうか。莉子。」


「先生、」


「ん?」


「帰ってからじゃ駄目?」


「え、」


「ここで、全部が終わってしまうのが怖いの。帰ってから、歩も一緒に花火しよ?」


「莉子……。」


「ねえ、先生。お願い……。」



先生を困らせているのは分かっている。

こんなこと言って、駄々をこねたって意味がないってことも。



「じゃあ、莉子。」


「ん?」


「線香花火だけ、一緒にしよう。」


「線香花火?」



先生は、黙って頷いた。

私は、その意味が分からなかったけれど。

それでも何か、先生の思いのようなものを感じて。



「わかった。やろう?先生。」



先生と、海岸へ向かったんだ。
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