今も。これからも。ずっと、きみだけが好き。
 陽菜は航太の彼女に遠慮したかったんだろうと思う。

 自分の友達とも言っていたし、自分自身よりも大事にしてほしいのは彼女のはず。
 でも、航太が優先したのは陽菜で。

 複雑な気持ちが見て取れた。


 やがて、陽菜が、

「うん」

 って、航太の意思の強さに折れたみたいに、か細い声で返事した。

 ホントは俺が送っていきたいけれど、それは航太が許さないだろうから。

 陽菜も……
 今は俺のことなんて眼中にないから。

 俺のことなんて、見てもくれない。


「悠斗、伝言」

「ああ。分かった」

 今はこれくらいしか出来ない。

「ごめんな。頼む」


 航太は陽菜とその場を去って行った。

 ピッタリと寄り添うように歩いていく2人の後ろ姿を、手をこまねいて見ている自分に歯がゆさを感じながら……


 2人の姿が徐々に遠くなっていった。

 
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