過ちの契る向こうに咲く花は
「じゃあなにに引っかかってる?」
鳴海さんといい伊堂寺さんといい、一体どこから私のその部分を嗅ぎ取っているのだろうか。そしてどうしてそうも気になるのだろうか。
「聞かれたくない、って顔してるけどさ。でも話しちゃったほうが楽になることもあるよ」
人参のグラッセを口に運びながら鳴海さんが言う。それは間違いじゃないと思う。
「今度はあなたには関係ないです、って顔。だけどさ、他に相談できるひといる?」
痛いところをつかれた。確かにそうなのだ。私のこの現在のもやもや感を聞いてもらえそうなひとなどいない。そもそも深い人付き合いを嫌ってきたのもあるし、今回は事情が事情だ。
「だったら、俺ってベストポジションだと思うけどなあ。巽より聞き上手で話しやすい自信はある」
それは確かに、と思ったら笑ってしまった。私の顔を見て鳴海さんもにっと笑う。
「でも自分の問題です」
「その自分がどうにもできないんだったら、他人に頼るのも罪じゃないよ」
結構、しつこかった。だけど伊堂寺さんのしつこさとは違う。
話し上手というか説得上手というか、このひとは自分ってものをよくわかってるんだろうなと思うと、ため息が出てしまった。
諦めに近い、感情。
「私、目立つのがきらいなんです」
刃向かう気持ちはやっぱりでてこない。だから遠くから話すことにした。話さないとしつこそうだし、いつでもセーブできるし、それぐらいならいいかと思った。
鳴海さんが話しやすいひとだ、ってのももちろんある。
「どうして?」
当然の返しだ。だけどそこに重さはない。
「ちょっといやな思い出があって。だったら目立たないようにしようって」
「ふうん」
ここは、もうちょっとつっこまれると思った。だけど鳴海さんは頷いて流してゆく。
「じゃあ噂になって目立っちゃったのがいやだな、って?」
「そう、ですね。まさかこんなことになるとは……」
「でもそれは本質じゃないよね?」
今度はことばを遮られた。思わずフォークの手が止まる。
「だったら噂は噂だしそのうち消えるから、ってならないと思うんだけど。もちろん、こんなことになるとは、と思わなかったでしょとは言わない。予想外の展開だったと思う。だけど葵ちゃんがいやがってるのは、もっと別のことに思えるんだけど」
鳴海さんのお皿はほぼきれいに片付いていた。店員が食後のコーヒーを確認しにくる。
鳴海さんといい伊堂寺さんといい、一体どこから私のその部分を嗅ぎ取っているのだろうか。そしてどうしてそうも気になるのだろうか。
「聞かれたくない、って顔してるけどさ。でも話しちゃったほうが楽になることもあるよ」
人参のグラッセを口に運びながら鳴海さんが言う。それは間違いじゃないと思う。
「今度はあなたには関係ないです、って顔。だけどさ、他に相談できるひといる?」
痛いところをつかれた。確かにそうなのだ。私のこの現在のもやもや感を聞いてもらえそうなひとなどいない。そもそも深い人付き合いを嫌ってきたのもあるし、今回は事情が事情だ。
「だったら、俺ってベストポジションだと思うけどなあ。巽より聞き上手で話しやすい自信はある」
それは確かに、と思ったら笑ってしまった。私の顔を見て鳴海さんもにっと笑う。
「でも自分の問題です」
「その自分がどうにもできないんだったら、他人に頼るのも罪じゃないよ」
結構、しつこかった。だけど伊堂寺さんのしつこさとは違う。
話し上手というか説得上手というか、このひとは自分ってものをよくわかってるんだろうなと思うと、ため息が出てしまった。
諦めに近い、感情。
「私、目立つのがきらいなんです」
刃向かう気持ちはやっぱりでてこない。だから遠くから話すことにした。話さないとしつこそうだし、いつでもセーブできるし、それぐらいならいいかと思った。
鳴海さんが話しやすいひとだ、ってのももちろんある。
「どうして?」
当然の返しだ。だけどそこに重さはない。
「ちょっといやな思い出があって。だったら目立たないようにしようって」
「ふうん」
ここは、もうちょっとつっこまれると思った。だけど鳴海さんは頷いて流してゆく。
「じゃあ噂になって目立っちゃったのがいやだな、って?」
「そう、ですね。まさかこんなことになるとは……」
「でもそれは本質じゃないよね?」
今度はことばを遮られた。思わずフォークの手が止まる。
「だったら噂は噂だしそのうち消えるから、ってならないと思うんだけど。もちろん、こんなことになるとは、と思わなかったでしょとは言わない。予想外の展開だったと思う。だけど葵ちゃんがいやがってるのは、もっと別のことに思えるんだけど」
鳴海さんのお皿はほぼきれいに片付いていた。店員が食後のコーヒーを確認しにくる。