あなたのためのリップグロス
「さっきみたいにナンパされたり……いやらしい目で見られたり」
「なに言ってんの? あたしは誰の目にもとまらないよ」
「勘弁しろよ。さっき、待ってる優奈を何人の男がやらしい目で見てたと思う?」
信じられない話だ。
あたしの人生にモテ期はない。
「何人の男が、濡れた唇にキスしたいと思ってたと思う?」
「そんなこと、ある訳ないじゃん!」
反論したら、拓はまた不機嫌な顔になった。
「もういい……俺がわからしてやる」
その言葉を最後に、あたしは一言も喋れなくなった。
グロスという壁が無くなって、直に感じる拓の唇は熱くて、唇から溶けてなくなってしまいそうなくらいあたしの体は甘くとかされていく。