あなたのためのリップグロス
彼氏である彼とは、友達の期間が長かった。
映画にも行ったし、友達へのプレゼント選びに付き合ってもらったこともある。
だから、初デートってイメージは少ない。
そんな事を友達に相談したら、忠告された。
昨日までは、たいした準備もせずに、今までどおりの服装と軽くパウダーをはたく位のメイクで行くつもりだった。
なのに、仕事を終わらせて帰ろうとしたあたしを、友達である水口沙羅はカフェに引っ張りこんだ。
「あんた……今までどおりで行く気?」
「えっ? どこに?」
なんのことか分からず聞くと、盛大なため息が返ってきた。