あなたのためのリップグロス


「デートよ、デート!」


「ああ、その事ね。うん……別に、今さらだし」


 いつものあたしをよくも悪くも、よく知っている。


 本当に、いまさらなのだ。


 なのに、沙羅は呆れたような顔をした。


「馬鹿だね。だから、よけいにオシャレしろっての。男なんて、自分のためってゆうのが嬉しいんだから」


「そうなの?」


「そうだよ。ほら、これ貸してあげる」


 そう言って、沙羅がテーブルに広げたのは、ファッション雑誌だった。


 あたしが絶対に買わないもの。


 彼女が開いて見せたのは、デートに関する記事のページだ。


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