遅咲きプリンセス。
 
彼の接近度合いがあまりに激しいため、私の腰はすでに仰け反れる角度の限界を越えていた。

それゆえ、とても苦しく、自分でも情けない声だとは思うけれど、蚊の鳴くような声でしか、どうしてもお断りできなかったのだ。


「えー。俺とじゃイヤ?」

「いえ、そういうことではなくて……」

「だったらいいじゃん」

「いや、だから、なんでそう……」


ああもう、誰か助けてください。

この人、なんだか生理的に受け付けません。

仰け反れる腰の角度もとうに限界を超え、脂汗と、目にじんわりと涙を浮かべながら、誰かここを通って!腰が折れちゃう……っ!と強く念じていると、その瞬間、ふっと。

何かが私の横目に入った。


「お前ら、何やってんの」


それは、とても横を向ける状況ではなくとも、しっかり耳で覚えている菅野君の声だった。

結局、諸見里さんとのことで大きく時間を取られてしまい、昨日中だった書類の整理も片付かず、今日は朝からそれをやっていて、倉庫から関連資料を取りに行った帰りに、こうしてやたらと軽い彼に捕まってしまっていたのだ。

どうやら菅野君は、なかなか戻らない私を探しに来てくれたようなのだけれど、急ぎの仕事のため、機嫌はすこぶる悪い。
 
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