遅咲きプリンセス。
「鈴木、行くぞ」
「……あ、うん」
短く言うと、競歩か!と思うほどのスピードで仕事場のほうへ回れ右して戻りはじめ、私はとりあえず、“藤原大貴”と書かれたネームプレートを下げたしつこい彼に、小走りしつつ、会釈をしつつ、菅野君のあとに続いた。
けれどその藤原さんときたら、なぜか私たちのあとをニヤニヤと笑いながらついてきて、しっかり『第二商品企画室』に入っていくところも確認するのだから、なんだか気味が悪い。
どういう人なんだろう……。
背中に刺さる藤原さんの熱視線で、やけにそこがムズムズ、ザワザワしてしまう私だった。
そんなことがあってから、2~3日経った頃。
「すーずーきーさーん!」
「おぉっ!ふ、藤原さん……っ!!」
突如として、彼がやってきた。
片付けておきたい仕事があり、残業をしていた矢先、とうとう実力行使に出たらしい藤原さんに肩に手を置かれ、私は飛び上がる。
「この間の食事のこと、考えてくれた?」
「お、お断りしたはずですけど……!」
藤原さんの執拗なまでの顔の近さに、やはり今回も思いっきり体を仰け反らせる。
けれど、椅子の背もたれに邪魔をされ、前回の半分も腰は反対には曲がらなかった。