遅咲きプリンセス。
◆可愛い系の後輩君
最初にモニタリングした、あのちょっとおかしなグロスは、ちょうど1ヵ月でなくなった。
諸見里さんに2つ目の試作品を頂き、これも仕事、と割り切って付けはじめた2ヵ月目には、いつの間にかグロス特有の付け心地にもすっかり慣れ、特に違和感もなく、また、朝の身支度の一つにもすっかり組み込まれていた。
今日も今日とて、いつものダサい服装に、2つ目のグロスだけは異彩を放たせ出社した私は、今日から後輩の有村君と一緒に仕事をすることになっていたので、彼と8畳ほどの小さな会議室にて、机いっぱいに資料を広げている。
「先輩、この化粧ポーチなんスけど、どうしてこう、みんな取り出しにくい横置きタイプなんスかね? 不便っスよねー、ほんと」
「そうだね。確か有村君って、ビジュアル系のバンドを組んでいるんだったよね? 化粧品もたくさん持っていると思うけど、そういうのって、いつもどう持ち歩いているの?」
彼ーー有村優馬は、子犬のように可愛い顔を、一生懸命に思案顔にさせ、私の質問にうーんと唸りながら腕を組んで考えはじめた。
ベビーフェイスというか、幼顔というか、どうんな仕草や顔をしても“可愛い”と女性社員から人気の彼は、実はビジュアル系バンドのギタリストだというから、そのギャップが驚きだ。