遅咲きプリンセス。
そこで白羽の矢が立ったのが有村君と私だ。
私は諸見里さんのモニターをしているし、有村君はビジュアル系バンドを組んでおり、メイクもするため、そういった観点からも意見を出してほしい、ということらしい。
「今、ペンケースなんかは縦置きのものが出てますよね? あれ、すげー便利そうじゃないっスか? ポーチにも使えないっスかね?」
「あ、そうなんだ……!」
私の中でのペンケースといえば、必要最低限の筆記用具を入れるための、ただの袋だ。
そういうものが売られているとは知らなかった私は、哀れみを持った顔でこちらを見ている有村君に「あははー……」と笑うしかなかった。
時代だね、時代。うん。
それからすぐ、私たちは、実際にそのペンケースを見るために外に出ることになった。
「そうっスよ!縦置きの化粧ポーチをプレゼンしたらいいんス!行きましょう!」と、半ば強引に外に連れ出され、今、文房具店にいる。
「ああ、これこれ!これっス!」
「へぇ~。こんなのあるんだね~」
有村君が手に取ったペンケースを、私は彼の横から覗き込み、感嘆のため息をもらす。