遅咲きプリンセス。
 
一見すると、ほかのペンケースとどこも変わらないように見えるのだけれど、中を覗けばあらびっくり、縦に仕切りがついていて、本当にペンを縦にしたまま収納ができるらしい。

私も別のものを手に取り、しげしげと眺める。

ほうほう、これはこれは……。

すると、急に有村君がモジモジしはじめる。


「つーか、先輩、ち、近い……」

「あ、ごめん。こんなダサ子と恋人同士だと思われたらマズいもんね。離れる離れる」


けれど、他人だと思われるだろう2人分ほどの距離を取り、しげしげとペンケースに見入っていると、有村君のほうから、なんだかとても寂しげな空気が漂ってくるから驚きだ。

どど、どうした有村君!? 私と距離を取りたかったんじゃなかったの……!?

結局、会社を出たのは11時を少し回ったところだったこともあり、お昼を食べて戻ることになったのだけれど、その席での有村君はいつもの調子と変わらなかったので、私は特に気に留めることもなく、ランチタイムで込み合っている中、ジロジロと好奇の目で見られながら。


「ごめんね。ダサ子で本当にごめんね……」


と、彼に平謝りだった。
 
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