遅咲きプリンセス。
けれど。
縦置きの化粧ポーチをプレゼンする、という方向性で案が固まり、デザインや仕切りの具合などの細かな部分も大詰めになった頃……。
「もーーっ我慢できない!先輩のその唇、一体何なんスか!キスしたくなっちゃいましたよ、先輩。どうしてくれるんスかっ!!」
「え、えぇぇぇっ!?」
と。
突如、可愛い系の有村君が激変した。
「でも俺、彼女いるし、彼女を泣かせるわけには、どうしてもいかないんス!ちょっと課長と掛け合ってきますからっ!! じゃ!」
「え、あ、ちょ、ちょっと……」
そして、何を課長と掛け合うのかは分からないのだけれど、キスしたい衝動をとっても我慢した顔で会議室を出て行ってしまい、私は、訳も分からないまま、ぽつーんと取り残される。
しばらくして、会議室のドアが開く。
と、そこに立っていたのは。
「鈴木とはもう嫌だって散々泣きつかれた。仕方がないから代わりに俺がやろう」
「はあ……」
課長だった。
しかも「これだから若い奴はダメなんだ。公私混同しやがって」と毒を吐き、舌打ちをしたにも関わらず、まんざらでもない顔をして。
なんか変なの……。