遅咲きプリンセス。
その後、聞いた話では、有村君は彼女との結婚を急ピッチで進めはじめたらしく、ほどなくして、隣のデスクの菅野君のところに結婚式の招待状が置かれているのを発見した。
「あれ、鈴木には? ないの?」
「……そうみたいだね」
招待状を複雑な気持ちで見つめていると、それに気づいた菅野君が不思議そうな顔をした。
けれど私には、私にだけ招待状がないことにだいたいの察しがついていたため、こう言ってはあれだけれど、懸命な判断だよ有村君……と、今日もしっかりと光沢を放っている例のグロスの上から、そっと唇を噛みしめる。
私、だんだん分かってきたかもしれない。
このグロス、男性を惑わす作用がある……!
本当にとんでもないものをモニタリングしているのだと背中がザワザワしてきて、寒くもないのに、なんだか震えが止まらない私だ。
次に諸見里さんと会うのはいつだったっけ?
慌てて手帳を確認する。
やがて、日付けのところを赤のペンでグリグリと囲んだ部分を見つけた私は、あと3日の辛抱だ……!と、勢いをつけて手帳を閉じた。
3日後に迫っている化粧ポーチのプレゼンのときに、モニターをやめさせて頂きたいと、はっきり伝えよう、そう、決心をして。