遅咲きプリンセス。
 
「よし。鈴木、お前が作れ」

「それしかないですね!」


けれど、泣いてばかりもいられないので、課長と手分けをして手芸店を駆けずり回り、材料を集め、ほぼ寝ずにポーチを仕上げたのだった。

と、そういうわけだったのだけれど、まあ、諸見里さんには、とんと無関係な話である。

それゆえ……。


「それじゃあ、また1ヵ月後にね。発想はいいんだから、とりあえずは、きちんとあか抜けてちょうだいね、鈴木ちゃん」

「はい。本日はありがとうございました」

「うん!……あ。そうそう、これ。2つ目もなくなる頃だろうから、新しいのねー!」

「ありがとうございます」


と。

諸見里さんが帰る際、またしても例のグロスの第3号を頂く羽目になってしまい、もちろん、モニターをやめるお願いもできなかった。

先のゲリラ豪雪ばかりは、自然が起こす現象なので、誰が悪いというものでもなく、ここはまた、長いけれど1ヵ月間、待つしかない。

それより私は、孤立化してしまったという地域の方々の身の安全のほうが心配だ。

どうぞご無事で……。


「すまなかったな、鈴木。3日じゃどうにもならないことは分かっていたんだが……。諸見里さんに言われたことは気にするなよ」
 
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