遅咲きプリンセス。
 
けれど、帰宅したところで、することといえば観葉植物のお世話くらいだったため、早々に片づいてしまい、それからのほぼ丸1日を“あか抜けた化粧ポーチ”を考えることに使った。

その甲斐あってか、翌日。


「まったく、お前って奴は……。結局、どこでも仕事をしているんだから、無理に帰らすんじゃなかった。よくやった、鈴木。よしよし」

「……、……あ、あの、課長、頭……」

「ん? まあ、いいじゃないか」

「はあ」


なぜか課長から、よしよしと頭をなでられた。

しかも、私が考えた20パターンほどの案を全て試作してもらうように発注する、などと急に張り切りだしてしまって、先日の豪雪で煮え湯を飲まされ、悔しい思いをしたであろう縫繊工場へ、課長自ら発注をかけはじめたのだ。


「どしたん、課長。熱でもあるの?」

「さあ、どうなんだろう……」


自分のデスクに戻ると、菅野君にそうコソッと聞かれたのだけれど、ある意味お熱だよなぁ……と、すでにリップグロスの効果を確信している私は、口元を隠すように手を持っていき、彼に曖昧に笑い返すしかなかった。

まさかこの先、課長にまでキスを迫られたりしない……よね? すごく心配な私だ。
 
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