遅咲きプリンセス。
今日のお客様は初めて見る方で、年の頃、課長と同じ、30代半ばくらいだと思う。
何かスポーツをしているのか、肌は少し日焼けしていて、しわ一つない凛としたスーツの上からでもソフトに鍛えられたほどよい筋肉の様子が簡単に想像でき、無意識に頬が熱くなる。
顔はやや童顔で、少したれ目気味だ。
私がお茶を出している間も課長と談笑している彼は、笑うと右の口もとにだけ、えくぼが出るようで、それがとても可愛らしい。
髪は黒の短髪だった。
ワックスで無造作にまとめていて、そのワックスの香りか、香水の香りか、近くに寄ったときにすごくいい香りがして、ダサ子の私が言ってもいいことではないのだけれど、とても素敵なセンスを持っている人だと思った。
とにかく、格好いい……。
ほとほと、その一言に尽きる。
「失礼しました」
いつになく緊張したお茶出しを終えて、課長とお客様に一礼すると、応接室をあとにする。
幽霊扱いをされることには慣れているつもりでいても、やっぱり本心では、けっこうキツい。
失礼ながら、格好いいお客様を観察することで癒やしを与えてもらい、午後一のお客様だったので、これで終業時間まで頑張れそうだ。