遅咲きプリンセス。
さすが、部署内でも、合コンでは百戦錬磨だという小林さんからのアドバイスだ。
私にはてんで発想がなかった“男性の目を引く”というキーワードを、パソコンで小難しい文書を作っている手を少しも休めることなく、いとも簡単に出してくださるとは……!
本当に、さすが、としか言いようがない。
もちろん、男性社員へのリサーチも忘れない。
比較的話しやすい、私と似たような雰囲気を持っている、眼鏡仲間の駿河さんに、先ほど、小林さんにした質問と同じ質問をしてみる。
すると。
「我が輩、アイドル以外の女が使うものに興味はない。ポーチ然り、ほかの化粧品然り、我が輩はアイドルに使ってほしいからこそ、この会社で働いているのに、どうして一般のブサイク共が使うものを考えなきゃならんのだ」
「……、……」
「なぜそこで黙る?」
「いえ。し、失礼しましたっ」
と。
眼鏡を中指でぐっと持ち上げ、目の下まで伸ばした前髪の奥からギロリと眼光鋭く睨まれてしまい、変に引きつりそうになる頬の筋肉をなんとか笑顔のそれにし、すごすごと退散した。
そうだ、駿河さんはアイドル専門だった……。
俗に言う、オタクさんである。