遅咲きプリンセス。
 
いくら上司でも、やめてもらいたいことは、はっきりと言わなきゃならない。

そう心に決めて、課長の肩を思いっきり押す。


「やめてくださいっ!私、菅野君のことがずーっと前から好きなんです!だから、本当に困ります。今のことは、泥酔した課長が私を好きな人と間違えた、ってことにしますから、こんなこと、もう忘れましょう!お願いします!」

「……、……そ、そうだったのか!?」

「はい!」


私に押されたことで少しよろけた課長は、後ろにあった机に片手をついて寄りかかり、私が菅野君を好きなことについてか、部下に迫ったのは泥酔していたからか!とハッとしたのか、どちらとも取れる言い方をし、その後、額に手を置き、ふるふると力なく頭を振った。

……いや、間違いなく、菅野君のことが好きだと言ったほうへの驚きの声だったとは思う。

けれど、おそらくは課長も、自分は泥酔していたのだと思いたいはずだと思うのだ。

この場を納めるには、忘れることにするのが手っ取り早いというのもあるし、ここはぜひ、課長にも「酔っぱらっちまった~」と、泥酔しているふりをして頂きたいものである。


が。


「……あ。菅、野……」

「えっ!?」


そうそう、上手くいくはずもなかった。
 
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