遅咲きプリンセス。
 
いや、靴だけじゃない。

普段から“私は地味だから”と諦め、“ダサい私”にあぐらをかいていただけじゃないだろうか。

外見が全てだとは言い切れないし、今まで菅野君は普通に話しかけてくれていたけれど、女性の印象は見た目が9割、なんていう恐ろしいデータもあるくらいだから、やっぱり外見だってすごく大事なんじゃないかと思う。


「私、変わらなきゃ……」


グロスを拾い上げ、ぎゅっと胸に抱くと、私はそう、決意を新たにし、顔を上げた。

何も流行の服で全身を着飾らなくてもいい、高いヒールの靴を履きこなせなくてもいいから、せめて“ダサい私”からは抜け出そう。


「すみません、閉店間際なのに。あの、唐突なお願いなんですが、このお店の服で私をコーディネートして頂けないでしょうか」


目に留まった服屋さんに片っ端から入り、同じお願いをすること、4~5軒後。

私の両腕には、抱えきれないほどの大小さまざまな紙袋が下げられていて、お財布の中身はだいぶ寒くなってしまったけれど、心はなんだか幸福感に満たされ、足取りも軽かった。

そうだ、今日は金曜日だったし、明日の土曜日は美容院に行って、この適当に伸ばしただけの髪をバッサリ切ってしまおう。
 
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