遅咲きプリンセス。
なんだかよく分からないのだけれど、とりあえずはプレゼン成功だと思ってもいいようで、間の抜けた返事をしつつも、私は心の中でほっと胸をなで下ろし、自分をちょっと褒めた。
ふと、諸見里さんの隣に座っている課長に目を向けると、私と気持ちはほぼ一緒なのだろう、ほっとした顔で少し微笑まれる。
しかし、その顔の中には、いまだ菅野君と一言も話せないままでいる私への申し訳ない気持ちも含まれており、意外と気にしいなのね、と、そんな課長がなんだか可愛らしく思える私だ。
「あの、それはそうと、私にとってグロスはとても効果があったとおっしゃいましたけど、どういう意味なんですか? 差し支えなければ教えて頂けると嬉しいのですが……」
場の雰囲気も和やかになり、諸見里さんも隣の課長と談笑しながらプレゼンの資料を片づけはじめたので、不躾ながら、お聞きしてみる。
諸見里さんの言葉で唯一分からなかったのがそこだったし、そのために返事も遅れたのだ。
まあ、諸見里さんはつかみ所のない方だし、聞いたところで素直に教えてくださるのかは謎なのだけれど、きっとプレゼンの結果が分かるまでの間も気になってしまうだろうし、この機会に、ぜひ教えて頂けたらと思う。