遅咲きプリンセス。
部屋に帰って観葉植物の相手をしたところで、結局は1人だし、それなら、彼のために、有効かつ有意義に時間を使いたいと思う。
……実は、私は菅野君のことが好きなのだ。
さっきのお客様には癒やしを与えてもらってはいたけれど、本命は菅野君だったりする。
きっかけは些細なものだった。
入社してまもなく、この部署に配属になったのだけれど、持ち前の地味さで早々に出遅れ、私はすでに「……あ、いたの」というように、存在感もまるでなくなっていて、名前すら覚えてもらえない日々を送ることとなっていた。
けれど、菅野君だけは、デスクが隣だったこともあるのだろう、フレッシュな感じで。
「鈴木さん」と。
名前を呼んでくれ、その瞬間、恋に落ちた。
それから5年。
いまだに片想い続行中である。
菅野君、すごく機嫌が悪いみたいだけど、取引先の方と何か揉め事でもあったのかな……。
彼もまた、隣のデスクで仏頂面をしながら書類の整理を始めていたので、お揃いの仕事でなんとなく嬉しい反面、心配にもなる。
今日中でいいとは言われたけれど、できるだけ早く書類の整理を終わらせて、ほかにも手伝えることがあったら手伝おう。
そう、そっと思いを固めた。