遅咲きプリンセス。
なんだか間抜けな相づちを打ってしまったけれど、それも当然といえば当然だった。
諸見里伸也さんといえば、私たちの業界では知らない人はいないというほどの有名人で、どこの会社も彼と仕事をしたがっていると聞く。
彼と組めば、商品は軒並み大ヒットし、販売会社は、がっぽがっぽの大儲け。
都市伝説的な噂なので、本当がどうかは分からないけれど、大きく傾いてしまった大手化粧品メーカーをわずか1年で黒字に転向させた、なんて話もあって、彼は、“新進気鋭”のあとに“カリスマ”も付く、すごく有名なデザイナーだ。
そんな諸見里さんがうちの会社にお見えになっていることも、ただただ驚くばかりなのだけれど、どうして私なんかをご指名に……!?
全く話が見えてこなくて、私はさらに、課長に「どうして私なんですか?」と目を向けた。
すると。
「お前のその、目も当てられないくらいの猛烈なダサさにピンと来たそうで、ぜひ、お前に試作品のモニターになってほしいとのことだ」
「……、……。……え?」
「2回も言わせるな。光栄に思え」
「ええぇぇっ!?」
と。
課長は、やはりどこかモジモジした様子で、しかし声には威厳を持たせ、そう言った。