愛おしいって気持ち【短編】




「うーん…。」











「じゃあ、ここは、デザイナーと相談するとしてですね。ここの色なんですが───」










今日は私、なにも役に立ててない…。

久々に感じた無力感。








「すーぎーやーま!プロジェクト、残念だったね〜。」












藤野さんは頼りがいがあって優しい先輩。
会社にはつき合っていることは内緒にしているけど藤野さんにはバレバレ。














「はい…。わかってたんですけどね、まだ私には甘いとこがいっぱいあるって。でも今日の会議とか、黒澤さんはすぐ若い子にデレデレするし…。」










はぁとため息をつきながら言う私に













「んー、杉山。ちょっと厳しいこと言っていいかな?」





 






「え?あ、はい。」



 
 






厳しいのはそれだけ私に期待してくれてるってこと。
言わないよりずっとありがたい。












「杉山、仕事なめてんの?つき合うのは勝手だし、どうこうしようとは思わない。だけど、あんた最近黒澤さん、黒澤さんってうるさい。黒澤にだって考えはあるし、もっとも仕事のことなら褒めるのだって当たり前でしょう?それをあんたは……いい加減頭冷やしなさい。新人の頃の方が一生懸命で応援しようって気になったわよ?愛想尽かされても知らないよ。」













想像以上に厳しい藤野さんの言葉に私は声を発することも忘れてジッと藤野さんを見つめていた。













「厳しすぎた?ごめん、でも今のあんた見てらんないから。あんたはやればできる子なんだしさぁ。期待してるぞ?」

 









「…………すみま…せんでした…。」













「ううん!じゃ、また明日ね!」














藤野さんはこれから出張。
できる女の象徴の藤野さんは女性社員の期待の星。
そんな藤野さんと仲良くなれて。
こんなこと藤野さんぐらいしか言ってくれないからすごいありがたい…。












「私………………」











なにやってんだろ?




あー、本当にあほ。
バカすぎて笑えてくる。



 
やるときはやる!
遊ぶときは遊ぶ!

ってメリハリのきちんとしてた私が、いつの間にか中途半端になってたなんて……




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