愛おしいって気持ち【短編】
「はぁ、はぁ。あ、あれ?ここって。」
信じらんない。
旧校舎に来ちゃうなんて。
いろいろと、怪談話もあるこの旧校舎は実は黒澤と初めて会った場所だったりする。
あれは、一年生の入学式。
優華と同じクラスになれて嬉しくて、いろいろ学校の中を探検していたときに迷子になっちゃってこの旧校舎に迷い込んだ私。
「あれー?優華どこー!?」
スマホは置いてきていたために、途方に暮れていた。
お化けの類が大嫌いな私にとってこの旧校舎は耐え難い場所。
なんで私、ここに入れたんだろ?
怖いとこが大嫌いな私がこんなとこに入れるはずがない。
ひやりと背中に嫌な汗がながれる。
「お化けなんてなーいさ!お化けなんて嘘さ!ねーぼけーたひーとが見間違えたのさ!だけどちょっ「くっくっく。」
「うぎゃぎゃぎゃぎゃぁぁぁぁーー!」
あぁ、こういうときってもっとかわいい女の人だったらきゃあっとか言うもんなのか…
じゃなくて!!
「なにっ!?誰かここにいるわけっ!?!?」
「悪ぃな。驚かせるつもりはなかったんだけどてか、こんなにビビるとかうけるー!」
「ひっ、人!?あ、あ、あの!!助けてくれませんか!?優華の元に優華のとこに返してくださいーーーー。」
人を見つけた私はその人に泣きついて無我夢中でこう叫んでいた。
「うわっ、怖っ、てか優華って誰?知らねぇよそんな奴。てか泣くなよ!女はすぐ泣く…」
はぁとため息をつくその人。
失礼なっ。
てか聞き捨てならないんですが!!
「女だから泣くとかそういうんじゃないでしょうが!あんただって泣いたことあるでしょ!なによ?泣くのが悪いことってわけ!?」
「はぁ?ねーよ。泣いたことなんざ。恥ずかしくて泣けっかよ。」
「ばっかじゃないの!赤ん坊の時は泣いてたんでしょうが!はい、ばーか!」
「うっわ。じゃあ知らねー。ここで1人でいろや、お前。とんでもねぇ屁理屈言うんじゃねえよ!」
「ひぃっ。ご、ごめんなさーい。もう言いませんから!!」
「じゃ、行くぞ。その優華って奴のとこに。」
というわけで優華と無事に会えた私は黒澤に感謝して、それでおしまいって思ってたんだけど。
同じクラスになって。
隣席になって。
気がつくと今みたくなってた。
「懐かし…な。」
なんでこんなに悲しいんだろう。
悲しい?いや……切ないっていう感情だ。
切ない?
なんで切ないわけ?
「別に。勝手にすればいいんじゃん。」
って!!ここ、相変わらず暗いなー!
「こ、こ、怖くないでしょ!お化けなんてなーいさ!お化けなんてうーそさ!ねーぼーけーたひー………」
ボロボロと流れる涙。
何よ。お化けなんか怖くないわよ。
「うぅーー。ひっく。もー、なんでっ。ひっくばっかみたいじゃん。うっ。こんなの、私じゃないよ。やだっ、やだやだやだ!!!」
何に対しての嫌なのか。
もう私にはわかってた。
ううん、最初から。最初から好きだったんだ。
なんだかんだで私は自惚れてた。
黒澤は、私のことが好きなんじゃないかって。
「うーー。もう、バカみたい。」
机も椅子も何もない教室にうずくまる私。
後悔したって、もう遅すぎじゃん。