愛おしいって気持ち【短編】
ポロリと一滴の涙がこぼれ落ちる。
「まだ…まだ、やり直せるかな?」
今度は自分の足で。
立ちあがってこの旧校舎を抜けて。
そしたらなんか前向きになれそうな気がして。
「よしっ、メソメソしてても始まんないじゃないかっ!」
走るたびにギッと音がする廊下。
怖いけど…怖くない!!!
「っはぁー!」
やっと出られた。
ふっと肩の重みが消えたような気がして。
大失恋事件…
もう大丈夫だ、なんか!
あとすることは一つだけ。
「黒澤、どこにいんのかなっ!?」
それから校内を探しつづけたけど…
「どこにも…いないなぁっ。」
走り疲れて、外の階段に座って空を見上げる。
「せめてさぁっ、せめて、黒澤は幸せに何なよねー。」
空に向かって静かにいう私。
すると、旧校舎のほうに歩いていく女の子と黒澤を見つけた。
「あっ、くろ───」
小柄で笑顔の可愛いその子…。
もう無理なのかな……。
「勇気だせ、私!!!」
旧校舎の玄関の前に立つ私。
うっ、こ、怖いんですけども。
「くっ、黒澤君っ!?」
急にでかい声がしたかと思ったら、ドタバタと大きい音がして。
「はぁっ、えっ!?あれ…なんで、お前ここに?」
「黒澤ぁ!?あんた何で!?あ、私あんたに言いたいことが「これ、お前のじゃねぇの?」
シャランと心地の良い音が鳴る。
あ。それ。
「私のっっ!!」
「だろ。これ、お前がずっと持ってたやつなのに、旧校舎の教室にあったから。」
「ありが…とう。あのっ、あのね?」