サ ク ラ ブ


椅子に座る医者は、俺が椅子に座ると、キーっと椅子を回転させて俺の方を見る。


なんもない、今だってそう思っているけれど、
それを確かめることがこんなに重いことなのか、
俺の心臓は馬鹿みたいに早く脈打つ。




「検査の結果ですけど…」



今にも心臓が口から出そうだった。


なんだよ、溜めんなよ、
緊張させんなよ、そんな言葉ばかりが俺の中で生まれる。



「…これといって異常はありませんでした。」


その一言に、ひどく安堵したことはもう当たり前だ。



何も異常がなかった。その一言にどれだけ安心したか。


俺は晴れ晴れとした気持ちで診察室を出る。


< 6 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop