君とひとつ屋根の下で


 「りーちゃん、今日のお弁当、美味しかったよ」






 優愛は何も気がつかずに、無邪気に笑ってくれる。



 この笑顔が、ずっと消えないでくれればいい。



 心から、そう願う。



 


 「フフ、なにが美味しかった?」
 「ミートボール!!」






 ………うん。



 美味しいよね、冷凍食品。






 「ねーねー、今日のお弁当作ったのって、りーちゃんじゃない?」






 よく気付くね、3歳。






 「うん…お姉ちゃんは、今日、ちょっと用事があって」
 「サクちゃん?」
 「うん、そうだよ」






 サクちゃんこと、松本さくらさんは、オーナーの娘さんだ。



 26歳で、中学校教師。






 「そうなんだー。じゃぁ、あとでありがとう言わなきゃ」
 「うん。後で言いに行こうね」






 本当だったら、普段はお母さんが作って、お母さんが作れないときにお姉ちゃんが作るっていうのが普通だと思う。



 とくに、わたし、今受験生だし。



 何があったって、オーナーの娘さんになんて作ってもらわないだろう。




 ―――さっきのお母様方の噂は、全て本当のことだ。
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