きみは金色
ギュウウと。ちっちゃい市ノ瀬を、全部包み込んでしまうみたいに。
「ごめん」
「…え?」
「ごめん。今からものすっごいワガママ言っていい?」
おれ。人前に出ても、全然緊張しねーほうだし。
どーでもいいって。彼女とか。そういうのに対しても、モノに対しても、固執しないほうだし。
しないほうだ、が、しないほうだった、に変わる。
そういう今までのおれと、今の自分。全然別の人間に、なったみたいで。
市ノ瀬。多分、おれ。
今まで本気で人を好きになったこと、なかったんだ。
本気になったから、わかったんだ。
「おれ以外の前で、ピアノ弾かないで」
「…えっ」
「おれ以外に、笑わないで」
「……あの、」
「おれ、市ノ瀬のこと、好きだ」