きみは金色
…つーか。
心の中でも、実際の手でも、握りこぶしを作って思う。
つーか、その前にフラれてねーし。ぜんっぜん、フラれてないし。
だって。
だって、市ノ瀬は、おれの。
「……あ、あの…飯田くん」
まだ突っ立っているおれの顔を、市ノ瀬が申し訳なさそうにのぞき込んでくる。
ドキッと跳ねた心臓。
気づかれないように、わざと不機嫌な顔を作って言った。
「じゃあ、塾まで送る」
「えっ」
「送る」
「あ……で、でも駅と方向違うよ?」
「…あ、歩きたい気分なんだよ!」
…歩きたい気分って。どんなさわやかキャラだ、自分。
焼けるような恥ずかしさが、つま先から頭のてっぺんまで上ってくる。
そんなおれを、市ノ瀬はもう一度チラッと見て。
「…う、うん。わかった」
小作りな顔をタテに振って、了承してくれた。