きみは金色
…やべ。何言おうとしたんだっけ。
すっからかんになった頭から、なんとか話題を引っ張り出す。
「……あ、塾!!塾って、歩いてどんくらいかかんの」
「えっ、塾?……20分、くらいかな?」
「にじゅう…」
「あ、でも飯田くんだったら、もっと早く着く距離かも…」
そう言って、市ノ瀬は、おれのとなりを小股でチョコチョコ歩く。
一生懸命って顔だ。もしかしてペース、速かっただろうか。
「……あ。歩くの速い?」
「えっ」
「…や、けっこう早足だから。市ノ瀬」
「ううん!?そんなことないよ?」
「あー…なら、いいけど。速かったら、言えな?」
「うん!ご、ごめんね」
…べつに、謝らせたいわけじゃないんだけど。
歩き方と同じくらい、生まれる会話がぎこちない。
途切れ途切れだし、お互いに気を張っているのがわかってしまう。