きみは金色
イスにもたれた姿勢は変えていないのに、全身が、キュウと縮こまっていく感覚におそわれる。
指先、つま先。
体の末端からサアアと、細胞が洗われていくように、鳥肌が立っていた。
「……すっげ」
思わず、口にしていた。
音楽のことなんてこれっぽっちも詳しくないおれでも、市ノ瀬の演奏が上手いということはわかった。
きれいだった。
単純に、すごいと思った。
なんだ。なんだろう、これ。感覚の全部が。
体の中身が、持って行かれる感じで。
自然と、体は起き上がっていた。
演奏に区切りがついたとき、おれはいつの間にか机に身を乗り出して、市ノ瀬に声をかけていた。
「すっげ……おまえ、うまいのな!!すげぇなぁ!!」