きみは金色
おれの興奮した言葉を受けて、市ノ瀬の目が丸くなる。
それは、音楽室に踏み込んだときに見たものと同じだった。
とても澄んでいて、きれいな目だった。
その目の下で、ゆっくりと、くちびるが動く。
「……ありがとう」
ほっぺたをほんのり染めて、市ノ瀬はそう言った。
丸から、弓なりに。
少しゆるんで形を変えた瞳は、ユラユラと波打っていて。
音楽室にある光が全部そこに集まって、ひしめいているみたいだった。
…ありがとう。
市ノ瀬がおれに、はじめて発した言葉。
心の奥で、季節はずれの風鈴が鳴った気がした。
なにかの手本みたいに、きれいな声だった。