きみは金色
…あっぶね。
冷静な表情を装うけど、内心ヒヤッとする。
イワコウに見つかるのはヤバい。
授業中に寝る生徒に容赦ないんだよな、あのオヤジ。
常にテキトーな雰囲気を出してるくせに、イワコウはそういうところには細かい。
出席簿の角をカーン!と落下させてきたり。首根っこをグイッ!とつかんで立たせたり。
そういうのは、お決まりの罰。
しかも立たされたあとには、全員の前でジャンプスクワット10回。
そんなはずかしめが待っているもんだから、イワコウの授業は比較的、マジメに取り組まれている方だった。
あくびを噛み殺しながらこっそり、左ななめの方向に視線を投げる。
その視線がたどりつく先は、2つに結ばれた、長い黒髪。
市ノ瀬 真子。
市ノ瀬は前から数えて2列目の席で、おれから見てちょうど、対角線上のところに座っている。