きみは金色
✳︎




「お待たせいたしました。カプチーノのお客様」

「あ、はい。わたしです」




ふわ、と軽くあがる白い手。


泡が揺れるカップが、華奢な体の前に、そっと置かれる。


おれの注文したコーヒーは、そのあとにすぐ運ばれてきた。



待ち合わせ場所に決めた、1軒のカフェ。


時間がゆったり感じられる、落ち着いた空間。




「…あ、えっと。いただきます」

「…ん、いただきます」




久しぶりに会ったおれたちは、なんだか照れてしまって。


お互いじゃなく、カップを見つめたままだ。




「…レオくん、カンパイしない?」




手を伸ばしてカップに触れようとしたとき、真子が言った。




「2人とも合格した、お祝いだから」




お互いの結果が出そろった、3月のはじめ。



「…おー」

「おめでとう、レオくん」

「…真子こそ、おめでと」




おれたちは2人とも、それぞれの志望大学に合格しました。



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