きみは金色
「…まっ、レオが好きなのはドーナツじゃないもんな」
「…は?」
そんなことを考えていたら、急に声色を変えて、裕也が言った。
含みを持った言葉に、眉をひそめる。
広告に面していた顔を上げた裕也は、ニタリと笑うと、楽しそうな声でこう言ってきた。
「『い』がつくモノ、だろ」
「………」
ウワサって。
疲れるのはされる方だけで、する方は、疲れるどころか楽しいんだろうな。
あきらめたように若干目を細めつつ、そんなことを思う。
…あの、音楽室での出来事以来。
おれはクラスメートたちから、市ノ瀬ネタで、さんざんからかわれるようになってしまった。
誰が誰を好きだとか。
誰と誰が付き合ってる、とか。
たしかにそういうウワサは、おれたち高校生にとっては大好物のネタだ。