その"偶然"を大切に
四日目
―――――四日目。
これはなんというか……修羅場、というのではないだろうか。
「小島さん」
そう声をかけられたのは、大学の掲示板を見ていたときだった。掲示板は近づかなくては見えないので早々と諦め、奈美に画像としてカメラで撮ってもらおうと思ったときだった。
声をかけてきたのは女の人で、「ちょっと話があるの」といってきたので、私は「なんですか」と返した。
誰だろう。
知り合いなら明日香と名前で呼ぶだろう。
それに――――ぼんやりとでもわかる、スカートにヒール靴という姿の、いかにも女の子というような格好をする友人は少ない。
向こうは私のことを知っているようだが、私はさっぱりである。
ともあれ「ここじゃあれだから」といわれ、三階まで上がった時だった。彼女は階段からぬけて、講義室へ向かう。そこは私が今からいこうと思っていた講義室だった。
彼女はしかし、講義室には入らなかった。講義室のまえで立ち止まって、くるりとこちらを見た。
「聞きたいことがあったの」
「何ですか?」
「千住くんと付き合っているって本当?」
「えっ」
聞き間違いかとも思ったが、そうとしか私には聞こえなかった。だから即座に「付き合っていません」と返すが、彼女は「違うの?」という。その聞き方がどこか刺々しい感じがするのは気のせいだろうか。
再び私は否定する。
そんな話、何処で聞いたのか。
そこで思い付いたのは、昨日樹くんのところにいたあの女の子たち――――。その一人かもしれない。