その"偶然"を大切に
だから、そう。
私が見たとき、樹くんが少しだけ困ったような顔をした。
それは私が樹くんのことを"怖い"と思ったのでは?というものからの表情なのだろうか。
わからないけど、もしそう思っているなら――――違う。
「樹くんって」
「うん?」
「笑うと、目元が優しくなるように見えるね」
自分で言っていて、恥ずかしくなった。けれど本当のことをいっただけ。
いわれた樹くんは目を手にやって「そうかな」といっている。
そうだよ、本当。
怖くないよ。
「初めて言われたよ、そんなこと」
繰り返した私に、樹くんが見せた笑顔には照れが混じった明るいものだったから、それに私もまたつられるように笑った。
* * *