キスをしない男


「せ、先輩!!今日のランチはどこ行きますか?」


彼女とランチをするのが、日課になりつつある頃。

雰囲気がいつもと違う事に気付いた俺が、じっと顔を見つめると、その視線に気付いた篠崎は、真っ赤になって顔をそらした。

「いつもと違う」

「せ、先輩は大人の女性がタイプですよね?どう頑張っても、私は先輩より年上にはなれませんから……」

まだ、そんな事を言っているのか。

だから、メイクを変えて大人の女に近付こうとしているんだな。

だけど、似合ってないんだよ、童顔なその顔に。

「でも、俺はいつもの方が好きだな」

そう言うと、少し、しょんぼり気味の彼女を抱き寄せ、唇にそっとキスをした。

「先輩……?」

俺の為に、背伸びをしようと頑張ってくれた、その可愛い姿に、いつの間にか俺は笑顔になっていた。

「グロス塗りすぎ」

そして、彼女の反応を確かめるように、その濡れた唇に何度も甘いキスを交わした。


「……だって、先輩はヤるだけの男じゃないって、証明したかったですから……」




(完)


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