職業「アイドル」
姫はお正月のスペシャルドラマ、真帆は旅番組の収録。
今日はそれぞれ違う仕事で、万智子さんは真帆の現場を担当。私の現場には大平さんという男性マネージャーがついてくれている。
「もうすぐ最終回だけど、初めてのドラマはどうだった?」
8月から始まった撮影は、予定通り終了間近。
「う~ん。楽しかったけど、反省点の方が多いかなぁ」
戸惑うことばかりで、全然上手く出来なくて。
たくさん迷惑かけちゃったけど、たくさん勉強させてもらえた。
「視聴率もいいし、みんな誉めてたよ」
大平さんに手渡されたペットボトルのお水に口をつけながら、この3ヶ月を振り返った。
ペーペーの私以外は大御所や実力派が名を列ねるキャスティング。
そんな中始まった撮影は、緊張のあまり覚えたセリフを言うだけで精一杯で演技どころの話ではなかった。
NGを連発して、私のせいで時間が押したにも関わらず、次の仕事があるからと撮影時間も延ばせない。
もともとなかった自信はさらにペッタンコに萎んでしまって、現場に行くのが怖かった。
プロデューサーさんや監督さんはそんな私に何度も熱心に演技指導をしてくれた。
自分のお父さんやお母さんより年上の人たちと、同じ現場で仕事をする。
どうしても甘えてしまいそうになる私に、同等な立場で仕事をしているんだということを教えてくれた。