勝手な恋
はじまりは、廊下から。
はじめから、失恋。
「うっわー。またやったなぁ剛。」
中学からずっと仲良しの田口翠(たぐちみどり)ちゃんが、廊下に貼り出された成績上位者の名前を見て言った。
「うそ〜ぉぉ」
私、三谷恋春(みたにことき)は、6戦目の定期考査でまたしても2位を取ってしまった。
「えっへへん!また俺の勝ち!な、恋春!」
私にVサインを向けながらニカっと笑っているこの人は、清水剛(しみずたける)。
はじめてこの人の存在を知ったのは、一年前の高校1年生のちょうどこの時期。
私が見つめる掲示のすぐ横で、友達と思われる男の子に絶賛されていた。
-すっげぇ剛、1位かよ!-
-まぐれだよ!まぐれ!-
まぐれなわけない。
私、ちょっと知ってた。
いつもは友達に囲まれてわいわいしてるけど、サッカー部のない火曜日と木曜日は必ず図書館に来て夜遅くまで勉強してる。
そんな彼と打ち解けるには、そんなに時間はかからなくて。
「むうぅ…。」
今では、私のライバルであり、勉強仲間であり、1番の男友達。
「ずるいよ…剛。なんで一緒に勉強してるのに、私は一度も剛に勝てないのー?」
150センチと背の低い私は、178センチと長身の剛を見上げて涙ぐむ。
「しっ…しらねぇよっ//」
ぷいっとそっぽを向く剛。
感じ悪いなぁ…。
はぁ…まただめだったなぁ。
6戦全敗。
凹んでいると、横から翠ちゃんの優しい声が聞こえた。
「恋春、2位でも十分すごいよ。」
よく頑張ったねってなでなでしてくれた。
涙腺は崩壊。
私は優しい翠ちゃんの胸に飛び込んだ。
「ちょっ…俺が泣かせたみたいじゃん!」
「お前が泣かせたんだよバーカ。」
男の子(特に剛)には毒舌な翠ちゃん。
からかい甲斐があるんだって前言ってた。
廊下でそんなこんな?わちゃわちゃしてると、ふと3年生の掲示が目に入る。
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