勝手な恋
「むぅっ。また剛に負けたぁ」
横のちっこくて可愛い生き物が、ほんのり赤いほっぺたを膨らませて言う。
「恋春は、やっぱ英語で足ひっぱってんだよなー」
頭を撫でてやると、上目遣いで見てくる。
ドキッ
「次こそは絶対負けないからね!」
一生懸命俺に負けまいとする
その可愛らしい姿が見たくて
俺を気にしていて欲しくて
俺はテストをがんばる。
絶対恋春に抜かれてはいけない。
常に1位でないと、俺は意識してもらえない。
入学初日から、可愛い子がいるなとは思っていた。
小さくて、細くて、色が白くて。
バッチリでまん丸な目に、バサバサなまつ毛が飼ってるチワワに似てて、ちょっと気になった。
そのうち、中間テストで2位だった子だって知って
なんとなく話かけてみて
一生懸命俺の相手をしてくれて
俺に向けられた最初の笑顔は忘れられないものになった。
彼女にもっと近づきたくて
仲良くなって。
でも違う。
俺がなりたいのは、恋春の親友なんかじゃない。
そうだよ、俺
三谷恋春が好きだ。
俺は
俺は
恋春の彼氏になりたいんだ。